探偵は、ターゲットをこっそり尾行したり写真を撮ったりして浮気調査にあたります。
通常の人がまずしない行動をするわけですから、それだけ危険も伴いますし、場合によっては法律すれすれのこともあります。
ここでは、探偵が行う浮気調査と、それがどのような場合に法律に抵触するかを考察します。
1.浮気調査契約におけるコンプライアンス
まず契約においては、書類上何点かの必要事項を満たしていなければなりません。
(1)重要事項説明書
浮気調査をする契約にあたっては、調査内容全般についての説明書を作成し、それに基づいて「重要事項説明書」を説明し、顧客から署名・捺印をもらわなければなりません。
(2)見積書あるいは金額明細書
浮気調査を行うにあたって発生する総額料金を記載した書類です。
調査料金、および随時発生する諸経費等があればそれも明記されている必要があります。
浮気調査で最もトラブルが多いのが料金をめぐってですから、料金については細心の注意を払ってチェックしたいものです。
(3)調査利用目的確認書
契約前に、依頼者が浮気調査結果を悪用しないという内容の「誓約書」を作成します。これは「探偵業の業務適正化に関する法律」第7条で作成が義務付けられているため、必須の書類です。
つまり調査結果とは、配偶者と浮気相手の個人情報を多く含むものですから、下手をするとストーカー行為をする格好の材料となってしまいます。そうした使い方をしないという誓約書です。
浮気調査の契約にあたっては、このように、コンプライアンス重視の観点が求められています。
2.調査過程におけるコンプライアンス
(1)住居侵入等の危険性
ターゲットを待ち伏せする場合、隠れて写真撮影をする場合等において、身を隠すために他者の敷地に踏み込んでしまうと、住居不法侵入の罪になる恐れがあります。それは雑居ビルでも同様ですから、待ち伏せをする場合には、身の置き所に注意しなければなりません。
(2)写真撮影の問題点
暗闇で高感度カメラを使って撮影する場合、フラッシュは光りませんから、仮にそこに第三者がいたとしても、気づかれる可能性は低いです。
しかし、それを裁判の証拠として提出する場合には、取り扱いに注意が必要です。
(3)GPS捜査
GPS捜査とは、GPS発信器を車の下部などに取り付け、ターゲットがどこにいるかをリアルタイムで把握する機器です。
浮気調査にはとても便利ですが、2017年3月、最高裁はこの犯罪捜査を「プライバシーを侵害するため違法」との判断を示しました。
したがって、探偵がターゲットの車にGPS機器を取りつけることはプライバシーの侵害にあたり、ストーカー規制法の観点からも違法となります。
GPSロガーというものもあります。USBメモリ大の小さい機材をターゲットの鞄などに入れておき、あとで回収してパソコンにつなぐと、一日に移動した場所が地図上に表示されます。
しかしながら、犯罪捜査においても違法とされている方法は、探偵が浮気調査をする場合においても使うことはできません。GPSロガーを妻が夫の鞄に入れて行動を知ることはできても、それを裁判資料とすることもできません。
そう考えると、裁判資料として使える浮気調査結果は、写真がメインとなってきます。
3.個人情報という壁
2003年に成立した「個人情報保護法」によって、浮気調査はかなり難しくなっています。
例えば、浮気相手の車のナンバーを見て、そこから相手を突き止めることは、個人情報保護法に抵触してしまいます。つまり、ナンバーに付随する個人の氏名や住所は、本来は役所のみが把握していることだからです。
同じように、メールアドレスから個人、勤務先から個人、公共料金領収書から個人を突き止める行為は、違法となります。
すなわちこうした情報は、探偵が独自に得るのではなく、依頼者から提供を受けることでなければ違法となってしまうのです。探偵業で認められているのは、「尾行」や「張り込み」「聞き込み」などであり、いわば実地での調査のみです。
この点は、依頼者と探偵社双方ともによく把握しておかなければなりません。
「探偵だから大丈夫」と信じて疑わず、浮気相手の個人情報を入手しようとして、法律に違反してしまうことがあってはなりません。一方の探偵はプロですから、そうしたことは考えにくいですが、勢いあまってつい、ということもあり得ます。
違法な浮気調査をしたため、それを裁判で使おうと思っても無効になってしまったり、逆に法律違反で咎められたりということも考えられます。それを防ぐためには何よりも、法律に精通精通した探偵に調査を依頼することです。
ただし浮気調査という行為の性格上、あまり人には相談できません。広告を見ても、どこがいいか判断するのは難しいでしょう。そのうえ、できるだけ早く結果を知りたいと焦る気持ちもあります。
そこで最も無難なのは、探偵事務所・興信所から見積もりを取り、実際に訪問し、探偵と話をしてみることです。車を買う場合でも同じことですよね。ディーラーに行き見積もりを取り、セールスマンと話し、価格を見て決める。
重要なポイントは、価格だけではないはずです。「この販売店なら、末永くつきあえる」という点も大切ではないでしょうか。
それと同様、浮気調査においても、実際に事務所を訪問し、法律に精通し、コンプライアンス意識の高いところにするのが最善の方法です。また希望と合致した内容で納得できるものかどうか、信頼感はあるか、なども重要なポイントとなります。
浮気調査と探偵の基礎知識
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