近年よく聞く言葉のひとつに、「コンプライアンス」があります。
簡単に言えば法令遵守のことで、特に企業においてその重要性はますます高まっていると言っても過言ではないでしょう。
1つの商品欠陥であっても、それが全世界で使われていれば、最終的に企業の経営破綻につながることもあります。1人の従業員の顧客対応が報道やインターネットを通じて広がり、企業イメージを根本的に損なうこともあります。個人が法令を遵守することはもちろん必要なのであるが、特に企業コンプライアンスは、経営においても重要な要素を占めるようになっています。
と言うのも、筆者は長年企業コンプライアンスを担当してきたからで、その経験から言うと、この章で説明する探偵業においても、コンプライアンス遵守は例外ではありません。
特に、興信所や探偵事務所が浮気や企業を調査するときにおける探偵業法等の法令遵守、顧客情報の秘密保持厳守、裁判における証拠資料の提出など、契約から調査・報告、そして裁判という最終段階に至るまで、法令は切っても切り離せない関係にあると言えます。
1.浮気調査や信用調査は法令遵守との闘い
そこでまず、浮気調査というものをざっくり考えてみましょう。
既婚者のうちのどちらか、つまり夫あるいは妻がパートナーの浮気を疑い、もしくは確信し、悩み、腐心し、最後に全てを明らかにして決着をつけようという心の動きから、浮気調査は依頼されます。
浮気調査の主な方法は、尾行と写真撮影です。ターゲットに気づかれずに尾行するのは至難の業で、とても素人が一朝一夕にできるものではありません。さらに、裁判でも証拠となりうる写真を撮影するには機材と使いこなすテクニックが必要となってきます。
これだけでも難しいのに、限られた時間の中で、確実に成果を得るためには、できるだけターゲットに近づく必要も出てきます。その結果、尾行においては「つきまとい」や待ち伏せしている間の「住居不法侵入」などの罪のギリギリのところで行うことになります。写真撮影は、「肖像権」、「プライバシーの侵害」すれすれのところで行うほかありません。
ただでさえ隠したがる浮気なのに、その証拠をどうにか掴もうというのですから、かなり際どく接近するのは当然のことです。
それに比べて企業間の信用調査はややし易いと言えます。新規取引先の支払い能力、債務超過の有無、バランスシート、商業・不動産登記簿等からかなりの部分は把握でき、それらは極秘裏に行わなくとも可能です。
2.安易な浮気調査はかえって危険
すると、あまり他人に相談できない浮気調査においては、相談・見積もり・契約・結果報告という一連の行動が依頼者だけで行われてしまう傾向が出てきます。そこに悪徳業者がつけ込む余地が生まれるのです。
特に、美辞麗句を並べている興信所・探偵事務所ほど注意すべきです。例えば、このような言葉です。
「どこよりも安心確実な浮気調査をお約束します」
「親切、簡単、スピーディー、浮気発見率100%」
「浮気調査は、業界進展率ナンバーワンの当社へ!」
「追加料金一切なし。浮気調査は是非当社へお任せ下さい」
浮気調査をして、必ず浮気していたという証拠が得られるかどうかは、ケースによってまちまちであって、100%ということはまずあり得ません。
また価格についても、ターゲットの行動範囲が広ければそれだけ多くかかるのは自明の理であり、実情に関係なく「どこよりも安い」という宣伝文句は、非常に怪しいと見るべきでしょう。安いというワードは魅力的ですが、落とし穴でもあります。
3.浮気調査の難しさ
しかし浮気調査で難しいのは、「良い結果」=浮気をしていないことであり、同時にそれは【ないことの証明=悪魔の証明】とも言われることにあります。
つまり、結果報告書で
「浮気の事実は発見されませんでした」
と探偵事務所から言われた場合、夫あるいは妻が普段から配偶者に対して疑心暗鬼でいる場合、こうした結果報告は意味をなさない場合があります。つまり
「そんなことありません。私の夫(妻)は絶対に浮気しています。本当に調査したのですか?」
となると、トラブルにつながりかねません。
それを防ぐためには、見積もりから契約の時点で、探偵事務所が信頼できる存在ある必要があります。今ではほとんどの探偵事務所で無料見積もりが可能で、その段階で見積もりの内容に納得し、探偵の人柄に惹かれることが第一条件です。
もちろん、探偵事務所や興信所もコンプライアンスという観点は非常に重視しており、情報がネットを通じてまたたく間に広がる現代社会では、悪い事務所は淘汰される傾向にあります。
しかし、なかには悪質な事務所があるのも事実です。そうした事務所の広告や宣伝文句に惑わされず、きちんとした事務所を選ぶためには、まさに事務所のコンプライアンスをチェックするのが最善の方法です。
それは例えば、探偵業を公安委員会に届けているか、秘密保持は厳守されているか、信用できる探偵であるか等をチェックすることです。まずは依頼者側がしっかりした知識を身につけ、信頼できる探偵社や工作員を見つけることです。そのうえでプロに依頼すれば、結果についても安心できることは言うまでもありません。
浮気調査と探偵の基礎知識
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